- モノづくりの根っこ - interview vol.02




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- モノづくりの根っこ-
interview vol.03



LOOPÉデザイナーの木村と親交がある河邉徹氏をお招きして、創作活動に関する考えや想いをじっくりと語り合っていただきました。異なるジャンルのクリエイター二人が対話することで、モノづくりの本質を深く探求します。


河邉 徹 | Toru Kawabe
作詞家・小説家。1988年6月28日、兵庫県生まれ。
バンドWEAVERのドラマーとして2009年にメジャーデビュー。バンドでは作詞を担当した。『流星コーリング』で第10回広島本大賞(小説部門)を受賞。その他著書に『蛍と月の真ん中で』『言葉のいらないラブソング』など。



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── 「職業」、「世代」、一見して接点のなさそうなお二人ですが、どのようにして出会い親交が深まったのでしょうか?

木村:初めて会ったのは2016年ぐらいかな?河邉君がバンドをやっていた時の衣装提供がきっかけですね。LOOPÉではなく別のブランドでしたが、その時のプレス担当者を介してプライベートで食事をしたのがきっかけです。なので、今もビジネス的な関わりはあまりないですね。

河邉:確かにそうですね。

木村:そこから一緒に食事をする機会が増えたのですが、とにかく質問してくる内容や人の見方が変でしたね。僕の何を見てその質問してくるの?って感じです(笑)。

河邉:確かに質問はすごく多いかもしれないです。小説家だからなのか分かりませんが、色々なことに興味があるし質問をしたくなるタイプです。木村さんは服を作っている人ですが、そもそも身近にファッションデザイナーっていないですし、とても興味深い職業です。

加えて、木村さんの服を作るプロセスって独特じゃないですか。同じように「モノを作る人」とし活動してきて思うのは、僕がもし服を作るとしたらデザインから考えるか、自分が着たいからこうしよう、って発想なんです。でも木村さんってきっと全然違っていて、生地を見てこれを作ろうとか考えちゃいますよね。その発想は僕には絶対にないので、どういった感覚でそうなるのかとすごく興味がわきます。で、そんな風に気になった結果すぐに質問してしまいます。

木村:質問がすごく多いので、初めは不思議に思っていたよ。でも、作詞をしていると知った上で、何度かライブに行ってようやく理解できたかな。「独特な人の見方」それがすごく面白いし活かされているよね。




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── 先ほど話にありましたモノづくりのプロセスですが、お二人のデザイン哲学やインスピレーションの源などはありますか?

木村:僕の考えだと、生地と製品の間に何かストーリーがないと面白くないんです。例えば生地があるから単純にTシャツを作りましたというのではなく、この生地はこんな経緯を辿ってTシャツになると更に面白くなるとかをすごく考えています。もちろん小説ほどのストーリーはないのですが…。河邉君はストーリーってどうやって考えている?

河邉:僕の場合、日常生活の中で「これは一体何だろう?」と疑問に思うことがスタートになりますかね。あとは小説だけではなく映画やライブなどの様々なエンターテインメントで感動する瞬間も大事だと思っています。その中で、昔から何かに感動したときには「どうして自分は感動したのだろう?」と考えるクセがあるんです。それを紐解いて自分で再現したいってモチベーションがありますね。

なので、モノを作るには自分が感動した出来事を覚えておくことが大切だと思います。




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── そのようにしてモノづくりを進めていく中で、何に対して喜びを感じますか?

木村:お客様からの直接の声を通じて、自分が思い描いたところと共感できていると感じられる機会が多くなり、最近はそれがすごくうれしいです。

それと、モノづくりの人たちとよく話すのですが、僕のアイデアは中学生が夏休みに悶々と考えるような、「こんな服があったらカッコいいな」とか「こんな車に乗りたいな」というような発想なんです。もちろん商売だからプロの仕事として真面目にやらなければいけないけど、入り口はそんな感じで作りたいと思っています。デザインのアウトプットは僕かもしれないけど、一緒に携わっている人が、そうやって出来上がったアイテムを見て、売れるかどうかではなく、同じベクトルでただ純粋に「良いものできた」と共感できるときが一番うれしいです。

河邉:アーティストですね!やっぱり自分の納得いくものが作れるのが一番うれしいことだし誇らしいことですよね。もちろんそれが受け入れられると更にうれしいです。だからやめられないです(笑)。



── 一方で、制作の際の課題や困難、つらいと感じることはありますか?

河邉:やっぱり作ったものを否定されるのはつらいですね。めちゃくちゃ良いと思って出したのに、「これは今の世の中ではちょっと違うな」とか。木村さんもそういった指摘をされることはありますか?このデザインは違うとか。

木村:もちろんゼロではないよ。やっぱり商売ベースの目線で見る人からは「これだとあまり売れない」とかって意見もあるし。でも、じゃあそれをもう少し売れるようにとなっても全く想像できないんだよね。自分の中での100点を80点にして、それがセールス的には100点になるとなったときが一番困っちゃうね。

河邉:仕事で否定されるようなこととかあります(笑)?

木村:(笑)

河邉:例えばですけど、「ポロシャツっていまは着ている人が少ないよね、だから今回ポロシャツは作らないよ」となることはありますか?僕はそんな風にして、考えていたアイデアが形にならないことがたくさんありました。

木村:我々からしたらそうなると本当につらいよね。でも、今回LOOPÉで出したポロシャツに関してはちょっと違っていて、僕が「ポロシャツってどう?」って聞いてみたら、まわりの人たちは「何でポロシャツ?」ってなったし、実は僕もポロシャツを持ってないんだよね。そこでふと考えたのが、自分はポロシャツを「何で買わないのだろう?」「何で着ないのだろう?」。そこからは、「どうしたら自分はポロシャツを着るの?」ってすごく考えるようになって、今回LOOPÉならではのポロシャツを作ったんだ。

自分の好きなファッションとかカルチャーの人たちがどんな感じでポロシャツを着ていたらカッコよくて、自分もカッコいいなと思えるのか。ポロシャツなんだけどちょっとズラしたポロシャツにしたいなと。だから社内で普段ポロシャツを着ている人からは「ちょっと違う」とか言われたね。

河邉:それはうれしいですよね。

木村:そう!してやったり。今回はポロシャツを着る人のためでなく、ポロシャツを着ない人のために考えたポロシャツだからね。




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── そのような思いやプロセスを経て生まれるLOOPÉの服を着用して、河邉さんが感じることは?

河邉:やっぱり生地がしっかりしているなとすごく感じます。丈夫だなと。

木村:僕が生地にこだわっているって先入観は抜きに(笑)?

河邉:抜きにです(笑)。LOOPÉと他に着ているアイテムと比較しちゃうとLOOPÉがとてもしっかりしているとハッキリ分かります。また、生地がしっかりしているからスタイルも洗練されているように感じます。今ってほとんどの人がファストファッションを着ますが、そういった人が着るとより違いが分かると思います。

木村:河邉君はLOOPÉ以外で普段服を買うときって何を気にしている?素材とかって気になる?

河邉:んー、僕が素人だからかもしれないですけど、素材って買う前に触ってもよく分からないんですよ。自分で普段着ていって、そこから洗濯をするとか扱ってみないと判断がつかないんです。買うときにはいいと思っても、使ってみたら意外と脆かったり。なので服選びの入り口はやっぱりデザインですね。

あとは、こういう場で普通はあまり話さない内容かもしれないのですが、値段ですね。皆がコスパと呼ぶものは僕も気にするタイプだと思います。先ほど話したように、この価格なのに使ってみたら意外と脆かったと感じたら、もう一度購入しようとは思わないです。

木村:なるほど、確かにね。僕は、学生時代のもっと無知だった頃には値段を気にせずブランド物もバンバン買っていたけど、この仕事を始めてから服は学生時代より好きになっているのに、逆に変な頭で見ちゃうから本当にいいものじゃないと買えなかったりする。だから好きなブランドも限られちゃうし、古着が好きなのもそういったところからきているのかも。

河邉:作る工程が分かってくると、これにどのぐらいの費用がかかっているかとかも分かるものですよね。「これはこの値段でここまでやっているんだ、頑張っているな」と思うものもあれば逆もありますよね。そう言った目線で見てしまうようになったということですか?

木村:そうだね。ただ、僕が服を買うときって全てがコスト重視ではないんだ。特に高くても買うものってアイテムのクオリティだけではなく、「こんな発想で作るんだ」とか、付加価値に費用がかかっていると感じられたら、いくら高くてもそれには全然お金は払っちゃう。

河邉:なるほど、木村さんらしいですね。価値についての話で、僕は自分を応援してくれている方でしたり、人から頂いた服とかを着ることがよくあります。こだわりが強い人はそうしないのかもしれませんが、僕は本当にめちゃくちゃ着るんです。すごく嬉しくって。僕を思って選んでくれたこと自体がうれしいですし、自分になかったものや自分だと選ばなかったものが着られることもうれしいんです。誰かからもらって、大切にしようと思えることって、本来服自体に込められていなかった価値が生まれていることだと思うんですね。最近はそういったことも考えたりします。

木村:その考えは素敵だね。人によって色々な価値観があるし、これからも僕にしかできない価値をプラスできるように頑張ります。




── 本日は貴重なお時間をありがとうございました。最後に改めてお二人それぞれの印象を一言でお願いします。

河邉:生地オタクだなと思っています。生地のことばかり考えている人(笑)。

木村:何だろう、スタンド使い(笑)?
本人が話しているはずなのにもう一人後にいるような感覚。それがめちゃくちゃ面白い。